■ 難聴・耳鳴りにおける鍼灸治療

  • 難聴
    突発性難聴難聴とは音を伝える(聴覚)経路のいずれかの障害により聴力が低下する症状です。
    耳は外耳道(耳介から鼓膜までの部位で空気振動で音を伝える)と中耳(鼓膜や耳小骨から成り、鼓膜の振動を骨の固体振動につなげることで音を伝える)と内耳(リンパ液によって音と体の平衡を伝える)から成り、この外耳道・中耳道の経路を伝音系と言います。

    更に内耳にある聴覚センサーが振動を電気的信号変え、中枢に伝えていく内耳道から中枢の経路を感音系と言います。

    難聴は障害部位により、伝音系難聴・感音系難聴・混合性難聴(伝音系難聴と感音系難聴が合併したもの)の3つに分類されます。

    伝音系難聴には、耳垢や異物により外耳道を塞いでしまう耳垢栓塞や、中耳炎などがあります。感音系難聴には、突発性難聴や老人性難聴や騒音性難聴やメニエール病があります。

    突発性難聴は突然に難聴が発症し、しかも一方の耳に起こる原因不明の難聴です。耳鳴りやめまいが、難聴の発症前後もしくは発症と同時に起こることもあります。

    鍼灸治療では、自律神経を調整し、内耳の血流改善を目的に鍼灸治療をすることで症状改善を図ります。発症してから治療開始が早いほど、速やかに改善していきます。
  • 耳鳴り
    耳鳴りとは、外界からの音刺激がないのに、耳の中に雑音がしたり何か鳴っているような感じがするという症状です。

    耳鳴りのある患者さんの80パーセント以上で難聴の症状があると言われています。
    老人性の耳鳴りや難聴は、感覚細胞や神経の老化による変性によって起きるものです。
    その場合、改善しにくいケースとなります。

    難聴の場合同様、自律神経調節と耳周囲の循環改善を方針に鍼灸治療をしていきます。

■ 症例報告

  • ストレスが原因と思われる耳鳴り
    初診時33歳。
    約1カ月前に身内の方の看病と時期を同じくして、左側の耳鳴りが発症。良くなったり悪くなったり…を繰り返していたが、来院3~4日前くらいから、悪化。耳鼻科にて聴力検査をするが、聴力が低下し始めてきている(詳しい数値は未定)。しかし、日常会話は聞きとれている。

    耳周囲の循環改善の為、鍼治療と併せてレーザー治療を施す。
    発症してから治療開始までの日数が短かったのもあり、効果は速やかに現れる。
    3回の治療後には、耳鳴りが鳴っているかどうか分からない状態にまで改善。

  • 突発性難聴と耳鳴り
    初診時61歳。30年前にメニエール症状が発症。
    以後左耳の耳鳴りが残っている。
    更に2年前に右耳に突発性難聴を発症。
    後遺症として音割れ、耳鳴りが残る。
    良い時と悪い時の波があったが、来院時は悪い時が一定している状態。
    人の会話が聞きとりにくいので、外出したくない。

    まずは右耳を重点的に鍼治療とレーザー治療を併施。
    治療間隔は4~5日毎とする。
    4回目の治療後、4種類ある耳鳴りの音のうち、1種類減ったとのこと。
    12回目の治療後から更に1種類の音が鍼治療後2~3日間消失。
    その後音が小さくなっている。

    14回目の治療後、日頃聞こえていなかった音が聞こえ、治療室のBGMが流れていることにも気付いた。
    現在治療継続中。
    耳鳴りは、どちらの耳でなっているかが判別困難なため、左側の治療も増やしている。